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読書記録です。 書評というには大雑把、本人ですら読み返してどんな本だったか思い出せないかもしれないような、そんな記録(笑)

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みずうみ(いしい しんじ)

河出書房新社 2007年

水がこぼれだすようにいくつもの事が起きた。順々に行儀よくつながった、目に見える鎖のように運んだのではなかった…。ひとつだけ、教えてくれ。今日は、何月、何日だ? 伸び縮みする時間の中で渦巻き、落ちていく長篇小説。


ああ、こうだったなぁ、と思い出したようないしい作風。
この間読んだ「トリツカレ男」があまりにも整然と話になっていたのでついうっかり忘れそうだったけど、このつかみ所のないそれこそ掬っても掬っても零れ落ちてしまう水のような感じがいしい作品だったんだっけ。
人に勧めるのは難しい、だけども嫌いではない、掴めはしないんだけど、身を任せてみるのも悪くない、そんな話。

男は水を吐き出す。
眠っている少年も、タクシーを運転している男も、あるいは妊婦の夫も。
悲しみも切なさも不安も喜びも日常も、なにもかもがまんまんと湛える湖のそこから湧き出て、そして帰っていく幻みたいな。
上手く言えないけれど、そんな感じの作品。

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Presents(角田 光代)

双葉社 2005年

この世に生まれて、初めてもらう「名前」放課後の「初キス」女友達からの「ウェディングヴェール」子供が描いた「家族の絵」―小説と絵で切りとった、じんわりしあわせな十二景。

松尾たいこさんのイラストに惹かれて借りてみた。角田作品は実は初めてだ(アンソロジー収録は除く)
「今までで一番心に残った贈り物は?」そう訊かれたら、一体何を思い浮かべるだろうか。
ここにある12の贈り物は、必ずしも「物」ではない。それでも、どれもが「心」に届くモノなのだ。
贈り物というのは、心に届いてこそなのだと思う。日々のささやかな何かしらであっても、高価な何かに勝ることがある。
たとえば、うに煎餅が高価なピアスよりも響くように。

12篇のうち、8篇が家族の話。3篇が恋愛で1篇が友達、かな。
やはり家族(夫婦も含む)とは人生の共有時間が多いから、なのかな。

やっぱり「一番」は決められないけれど、私の人生にもいろんな贈り物があったことを思い出す。贈ったり贈られたり。
きっとこれから先も。


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タイムスリップ釈迦如来(鯨 統一郎)

講談社 講談社ノベルス 2005年

ブッダはオカマだった!? 老子からソクラテスまで世界最高の叡智を巻き込んで、インドの一ローカル宗教だった仏教が世界宗教となるまでを描く! 現代日本から古代インドへ飛んだ女子高生・麓麗の活躍や如何に。

「水戸黄門」を借りるつもりだったのに「釈迦如来」を借りていたうっかりさん。つまり再読。

このシリーズのむちゃくちゃ感は嫌いじゃないです。まあ、できればあまり超常現象を出して欲しくはないが、インドから中国に行ってギリシャまで行かねばならぬとあっては、ワープ能力がないと困りますわな(笑)
歴史をちょっと齧る程度には役立つと思います。
それ以上にくだらないとも思うけど。だってマツケンサンバやら、B'zやら出てくるからね、あの時代に。
それが鯨テイストです(笑)

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俺が俺に殺されて(蒼井 上鷹)

祥伝社 ノン・ノベル 2007年

俺は絞殺された。世界一嫌いな男・別所に。だが俺の魂は昇天せず別所の体に飛び込んでしまう! その頃起きた別の殺人で、別所に容疑がかかる。窮地を脱するため、俺は俺を殺した犯人のアリバイを俺自身で調べるはめに…。

結局真相はどうなの?
ややこしさもさることながら、終盤の急ぎすぎ感が否めない。
人間関係も中途半端な説明なので、なにがどうでどうなんだか。
乗り移りという設定事態はありだと思うし、それで加害者の側になってしまうというのもありだと思うんだけど、今一歩かな。

面白くないことはなかった。と、いう評価かな。

ところで、あんなにぬいぐるみ虐待(笑)のシーンが出てくるのに、そこに対して意味がないのが気になります。どうせなら、なんか隠しとけよ。

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少年検閲官(北山 猛邦)

東京創元社 ミステリ・フロンティア 2007年

何人も書物の類を所有してはならない。もしもそれらを隠し持っていることが判明すれば、隠し場所もろともすべてが灰にされる。僕は書物というものがどんな形をしているのかさえ、よく知らないーー。旅を続ける英国人少年のクリスは、小さな町で奇怪な事件に遭遇する。町中の家々に赤い十字架のような印が残され、首なし屍体の目撃情報がもたらされるなか、クリスはミステリを検閲するために育てられた少年エノに出会うが……。書物が駆逐されてゆく世界の中で繰り広げられる、少年たちの探偵物語。メフィスト賞作家の新境地!


『探偵』の畑を見た時点で、なぜか犯人が分かってしまった(笑)
書物がないというのは面白い設定だと思う。人々は検閲されたラジオで情報を得て、知識を得る。文字を書くのは黒板だ。町々は閉塞的で、外の世界を知らない。世界は水害や災害に見舞われて死の存在が濃厚すぎ、人はその気配に慣れきってしまう。
まあ実際にこんな世界は面倒だろうなとも思うけど。

犯人も分かったし、惨殺された後の死体についても発見時に容易に想像がついた。ガジェットだってあっという間に分かるんだけど(これは多分誰しも気付くだろう)
町の赤い十字架の意味がよく分からなかった。想像も上手く出来なかったが、表紙の右下に小さく描かれてあるのがその形なんだろうか。

まあ、でも、今までの北山作品に較べれば、段違いに読みやすい気がする。

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RUN!RUN!RUN! (桂 望実)

文藝春秋 2006年

目標はオリンピックの金メダル。箱根駅伝は通過点。仲間なんか必要ないはずだった…。アスリートとして最高の資質を持つ主人公が知った事実とは? 箱根駅伝に懸ける仲間と走るうちに、閉じかけていた世界が開いていく。


桂望実はこういうの好きだよね、と思われるストーリー展開。
つまり、「頑固(或いは傲慢。無感動)な扱いづらい主人公が、周りとの関わりを通して人間らしさを取り戻す」作品。
それ自体は嫌いじゃないけどね。

ただ、この話は、なんだかいまいち。
面白い事は面白いと思うんだけど、なんだか引き込み感が足りないというか、途中でもつれてるというか、もたれてるというか。
上滑りな感じが否めない。
客観的に表現しようとして失敗してる感じがする。主人公はもういっそ「優」じゃなくて「僕」表記でよかったんじゃないかな。
いや、インタビューの内容という設定で書かれてるのだからこういう書き方なのだといわれればそれまでだけど、なんかなぁ。

宙ぶらりんにしたままの、あのラストの疑問も、別に解決しておいて良かったんじゃないかな。その方が読後感のすっきりさが増すと思う。

とはいえ、面白いとは思う。
奇しくも今日(10/19)の新聞で箱根駅伝の広告(?)を見ただけに。

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クレィドゥ・ザ・スカイ(森 博嗣)

中央公論新社 2007年

ここにあるのは、空気、二機の飛行機。そして、見つめ合う目だ。
ごらん、これが彼らの場所、あれが彼らの墓。飛ぶために生まれてきた子どもたちの果てしない物語「スカイ・クロラ」シリーズ、完結!


完結、なんてことに、実は読み終えて、巻末の既刊案内ページ(広告ページというのか)を見るまで気付かなかった。
それくらいあっけなく、また良く分からないラスト。
いかん、これはつまりどういうことなのだ?と内心で首をひねってしまった。

多分それは、このシリーズ全体を通しての、掴み所のない感じのせいでもあり、前作からの間が開いてしまったせいで曖昧にしか覚えてない私の記憶力のせいでもあるのだろう(笑)

ただ、それでもこのシリーズは好きだ。
たとえば、エルロンだとかラダーだとかを理解できなくても、そんなことは瑣末なことだ。重要なのは感じることが出来るか否かだと思う。
知っていればなお面白いのかも知れないが、なにぶん航空用語が多すぎて(笑)

そのうちいつか読み返してみたいものだ。

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トリツカレ男(いしい しんじ)

新潮社 2006年

ジュゼッペのあだ名は「トリツカレ男」。何かに夢中になると、寝ても覚めてもそればかり。オペラ、三段跳び、サングラス集め、潮干狩り、刺繍、ハツカネズミetc.そんな彼が、寒い国からやってきた風船売りに恋をした。無口な少女の名は「ペチカ」。悲しみに凍りついた彼女の心を、ジュゼッペは、もてる技のすべてを使ってあたためようとするのだが…。まぶしくピュアなラブストーリー。

この冬、演劇集団キャラメルボックスの手によって舞台化される作品。
というので、先に読んでみました。
基本的に、原作を先に読んでいることが多いので(大抵読んだ後で映像化や舞台化されちゃうんだ)、そっちの方が慣れてるのね。

いしい作品は、不思議で優しくて温かい。そして、その優しさや温かさがどんな不思議だって受け入れている世界を創っている。
ちょっぴり切なかったり、実はがっすり哀しかったりしても、やっぱりどこか優しい。

この作品は、割合いろんな人向けだと思う。読みやすいというか、分かりやすい。と書くと、じゃあ他のは分かりにくいのか、という話なんだけど、分かりにくいというよりは、もっと不思議感が濃いというか。それはそれで好きなんだけど(笑)

胸がじんわりとあたたかくなる話。

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螺鈿の小箱(篠田 真由美)

東京創元社 2005年

サイゴンの熱気の中で、幻の満開の桜の下で、第二次大戦時の上海の妓楼で、秘めやかに繰り広げられる幻想の宴…。アジアの風土とヨーロッパの文化の配合が作り上げ、名手が心を込めて織り上げた、絢爛たる7編のミステリ集成。

てっきり「螺鈿の小箱」という表題作があると思っていたらそうではなかった。この本全体が小箱なのですな。時々、それらしい小箱が作中に登場して作品の妖しさをいや増してる。
東洋の神秘と西洋の品格みたいなものを足して混在させ熟成させたらこんな味になるのかもしれない。
滴る血、阿片の香り、砕かれた象牙、廃墟となった館、すべて美しく見えるそんな作品。
耽美と幻想の合間のような感じかな。

ところで、この間「黄昏ホテル」を読んだばかりなので、ここで出くわしたときに、実はちょっとまたか、と思ってしまった。もしかして、他の作家さんも、もれなく(或いは概ね)自作の短編集に収録してあるんだろうか。
まあ、いいんだけど(笑)

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エンド・クレジットに最適な夏(福田 栄一)

東京創元社 東京創元社・ミステリ・フロンティア 2007年

貧乏学生の晴也のもとに持ち込まれたのは、自分を付け回す不審者を捕まえてほしいという女子大生の頼み。早速彼女の部屋で不審者が現れるのを待っていると、マンションの前の道からこちらを見上げている男の姿が。しかし男は不審者ではなく、隣に住む女性の兄だった。妹と連絡が取れなくて困っている彼の頼みを、晴也は引き受けることになり…。なぜか芋蔓式に増えてゆく厄介な難題に東奔西走気息奄々、にわかトラブルシューターとなった青年の大忙しの日々を描いた巧妙なモザイク青春小説。『A HAPPY LUCKY MAN』の俊英が贈る快作。


『A HAPPY LUCKY MAN』に似たような展開かな。一つまた一つと問題が増えていってこんがらがるのだけど、それがあちこちでリンクしたりしながら徐々にほぐれていく、みたいな。福田作品は結構読んでるけど、割とこの感じ多い気がするなぁ。
テンポが良いです。登場人物がたくさんの割に把握しやすいし。
結末は結構、ええ、そこにもそんな伏線があんのかい!ってなオチだったけど、その裏切られ感も悪くない。
後味がどうなのよ、という気もするけど、あえてハッピーエンドもなぁ、と思えばこれもあり(笑)

オススメ。

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人柱はミイラと出会う(石持 浅海)

新潮社 2007年

留学生リリー・メイスは、日本で不思議な風習を目にした。建築物を造る際、安全を祈念して人間を生きたまま閉じ込めるというのだ。彼ら「人柱」は、工事が終わるまで中でじっと過ごし、終われば出てきてまた別の場所にこもる。ところが、工事が終わって中に入ってみると、そこにはミイラが横たわっていた。黒衣、お歯黒、参勤交代―。パラレルワールドの日本で展開する、奇っ怪な風習と事件の真相とは。

人柱はミイラと出会う/黒衣は議場から消える/お歯黒は独身に似合わない/厄年は怪我に注意/鷹は大空に舞う/ミョウガは心に効くクスリ/参勤交代は知事の務め

笑える。
建築物を作る祭には人柱、議員は黒衣を傍に置き、既婚者はお歯黒をする。厄年には休暇を取らないといけないし、警察は鷹匠を採用する、茗荷は記憶を無くすし、各知事は隔月ごとに東京に行かねばならない。
こんなありえない設定の日本なのに、それなりの理屈をつけられてしまうと、あるのかもしれないなぁ、と思わされてしまう。
そして、起きる事件も、しっかりとその風習にもとづいているところが面白い。
まさに、非「日常」ミステリ。

石持作品を読んだことない人にもオススメ。とっつきやすいと思う。


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花宵道中(宮木 あや子)

新潮社 2007年

【女による女のためのR−18文学賞大賞(第5回)】【女による女のためのR−18文学賞読者賞(第5回)】吉原の遊女・朝霧は、あと数年で年季を終えて吉原を出て行くはずだった。その男に出会うまでは…。生まれて初めて男を愛した朝霧の悲恋を描く受賞作ほか、遊女たちの叶わぬ恋を綴った官能純愛絵巻。

こういう作品だと知らずに読んだので(R−18)、えっらい濡れ場の多い作品だなぁ、と思ってた(笑)
まあ、これを読んで、女が感じるかどうかは別にしても(そういう主旨の文学賞らしい)、割合面白いと思う。
吉原の小見世、山田屋を舞台にした短編集なのだけど、まあ、その時代考証についてはさておいて、遊女達の生き様はなかなか。
先の話の真相が後にわかったり、時代が遡ったり、意外な繋がりがあったりして構成は面白い。

朝霧、霧里、八津、三津、茜、緑、などなど。いろんな遊女がいるけれど、やっぱり一番面白いと思ったのは朝霧かなぁ…。
なので、後で真相が分かっちゃうと、ちょっと興醒めです。
え、結局、どっちが理由なの?みたいな。

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